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金邦夫さんの新刊「すぐそこにある遭難事故」を読んでみた。

こんにちは。

先々月、5月25日ですが、元警視庁青梅署署員(2008年定年退官、2013年までは嘱託として勤務)で、長年にわたり奥多摩山岳救助隊の副隊長を勤められておられた金邦夫(こん・くにお)さんの新著「すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘」が発刊されていたので、早速購入して読んでみました。ちなみに金さん、名前だけ見ると外国の方と間違われそうですが、東北地方に古くからある苗字で、産出する砂金を京の都に納めていたために特に朝廷から賜ったという、由緒ある苗字だそうです。同じ読みで同系統の苗字には「今」さんとか「昆」さんとかもいます。

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すぐそこにある遭難事故  奥多摩山岳救助隊員からの警鐘
金 邦夫
東京新聞出版局
売り上げランキング: 82,027

今回の著書、金さんの前2作と同様、奥多摩で実際に自分が見聞きした遭難事故の事例をまとめたもので、版元は東京新聞出版局。東京新聞発行の月刊誌「岳人」に2013年から2014年まで連載された記事と、奥多摩観光協会発行の季刊誌「来さっせえ奥多摩」の2つの連載記事をまとめて収録したものです。前回記事で触れた、サルギ尾根の上高岩山から高岩山へのルートで道迷い遭難したケースもこの本で紹介されていました。

基本的には前作「金副隊長の山岳救助隊日誌 山は本当に危険がいっぱい」以降のエピソードを集めたものですが、2本ほど、前作と被っているものもあります。あらかじめ『はじめに』でもことわりが入れてありますが、一つは真名井沢(川苔山の東側、真名井北稜とその南の赤杭尾根に挟まれた尾根)で転落、意識不明の重体となりながら必死の救助で一命を取り留めたW大学のワンゲル部員のエピソード。普通なら絶対助からないような重傷者を救命できただけでも救助隊員としては印象深かったんでしょうけど、6年後(前作の刊行後)になって件の学生が大学院を終えて無事電機メーカーに就職した、と礼状を送ってきたそうです。やはり、すごく嬉しかったんでしょうね。文面からは我が事のように喜ぶ金さんの気持ちが滲み出ています。

もう一つは2006年に長沢背稜の三ツドッケ・一杯水非難小屋付近で発生した連続強盗事件。いわゆる「奥多摩の山賊」ですが、この事件の犯人が懲役10年の刑期でもうそろそろ出所ということで、中高年登山者はご用心を、というお話です。犯罪者更正という法の建前からすれば最初から疑ってかかるのはどうかという意見もあるでしょうけど、元警察官の金さんの立場からすれば一言言わずにはいられなかったようですね。窃盗や強盗の再犯率は決して低くないようですから、金さんが危惧される気持ちはよくわかります。

この二つを除いて、今回の本ではおもに2008年から今年初めまでの事例が紹介されていますが、2012年に川苔山・百尋ノ滝付近の断崖絶壁から150m滑落して助かった女性の話は、山歩きを始めたころに読売新聞のWEB版で読んだことがあります。このあたりでは2003年に同様に150m滑落した女性が亡くなっていますが、近くではないかと思っていたらやはり20mと離れていないそうです。他にも事故が何回かあって滑落の多発地帯みたいですが、殆どが下山でこのルートを使ったときに起きているようですね。川苔山も百尋ノ滝のある側はかなり急峻ですから要注意です。

それと、2013年に携帯電話で本人から救助要請があったものの発見できず、そのうち携帯の応答もなくなって完全に行方不明になってしまった棒ノ折山付近の都県境尾根の事例。未だに発見できていないようですが、こういったケースでは救助する側も無念でしょうね。この方を含め、2013年前後に長沢背稜などの都県境尾根で行方不明になったままの方が5人もいるそうです。このうち2人の方の遭難事故は私も知っていましたが(捜索のポスターが各所に貼ってあります)、まさか全部で5人もいるとは思いませんでした。確かに人が少ない場所ではありますが、これらの方々に共通しているのは登山届けが出ていないことだそうです。私は奥高尾縦走でもルートを必ず女房に教えてから山に入っていますし、東日原から先みたいな遭難多発地帯だと駐在所にも届けを出してから入山していますが、何かの理由でふと魔がさして「何も言わずに」山に入ったときに事故が起きるんでしょうね。心してかからねば、と思いました。

その他、2008年に奥多摩在住の登山家、山野井泰史さんがツキノワグマに襲われた事例なんかも出ています。金さんは山野井さんと親しいようで、当時の状況が詳しくわかります。私も昨年、倉戸山の現場近くを歩いたことがありますが、普段は熊鈴をつけない私がこのときばかりはちゃんとつけていました。

巻末のエピソードは2015年、今年の1月に本仁田山からの下山で道迷いした男性二人が、尾根の突端の崖から無理に降りようとして、二人とも滑落して亡くなった事例。新聞で遭難の記事は読んでいましたが、奥多摩駅から500mほどの場所だったそうです。奥多摩の場合、谷が侵食で深く刻まれているので、尾根の突端部は大抵険しい崖になっています。道迷いしたら絶対に無理に下りようとしてはいけない、よく踏まれた道のある尾根上まで引き返せ、というのが鉄則ですね。金さんも「何度でも言わせてもらう、『道に迷って沢に下りたら死ぬぞ』」と繰り返し書かれています。

最後に、金さんのこれまでの著作は以下の2冊です。

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奥多摩登山考
金 邦夫
財団法人東京都公園協会 2002年 『非売品』
Amazon.co.jpにはデータがありません。

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残念なことに現在は2冊とも絶版。「山岳救助隊日誌」の方はAmazonから古書で手に入りますが、数が出ないみたいで結構高めです。「奥多摩登山考」の方は自費出版物に近い形態の本(最初は現職の警察官が本を出すのはかなり大変で、苦肉の策でこの形態に落ち着いたみたいです)で入手は難しいです。以前は雲取山荘で売っていたとのことですが、今はさすがに残っていないと思います。
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テーマ : アウトドア
ジャンル : 趣味・実用

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No title

徒骨亭さん、再びこんばんわ。

山での事故・・・確かに、奥多摩には日本一登山者が集う山域と言っても過言ではないところなので、事故もその分多いのでしょうか?
青レンジャーも気を付けないといけないです。。。

山での事故というと、遭難、滑落などが思い浮かびますが、そうか連続強盗事件もあったのか。。。富士見平小屋の事件などもあるし、山では逃げ場がなくて(犯人も同じだろうに)、もしそういった場面にあったら本当に恐怖です。

Re: No title

青レンジャーさん、引き続きこんばんは♪

そもそも登山者の数が多いというのは遭難者が多い一番の理由だと思いますが、もうひとつの理由は「都内だから」と甘く考える方が結構多いという点ですね。確かに都心から電車一本で来れる場所で、駅を降りたらもう登山道ですからお気軽に捉えられがちですが、奥多摩の山々って石灰岩質で谷筋が深く侵食されていて、どこもかなり険しいんです。木が生えているのであまりそうは見えないんですが、木を全部とったらとんでもない断崖絶壁の連続になっているはずです。あと、「クマが出る」って話をしても「都内にクマがいるかよ」って信じない人も多いですね。悠さんも遭遇したことがありますし、私も昨年、ほぼ確実にクマと思われる動物に藪の中から鼻息で威嚇されたりしています。

先日のサルギ尾根もそうですが、取り付き部分は笑っちゃうくらいの急登だったりします。奥多摩はそういう場所が殆どなんですが、恐らく、唯一の例外が小袖乗越からの雲取山への登山道ですね。あそこだけがなぜか(実は七ツ石神社への遥拝道、らしいですが)緩やかな道が続いています。それでも、七ツ石山の南麓あたりでは急斜面のトラバース道になっていますから、滑落死亡事故も起きていたりします。人の多さに加えて、こういう認識のギャップも原因の大きな部分を占めているんじゃないでしょうか。

No title

再びこんにちは、徒骨亭さん!

金さんは、新しい本を出されていたんですね。
前回の出版以降の話ですか…機会があったら読まなくてはなりませんね~。
奥多摩は親しみやすそうな顔をして、実は急な斜面がけっこう多い山ですから、登りの時はいいけど下りは神経使うし、疲れも入ってくるから登りの時とは違う汗がだらだら、なんて事が結構あります。
「この斜面で蹴躓いて前に真っ逆さまに落ちたら、ただじゃすまない…!」と思う場面などは、本当に気を引き締めます。
単独が多いですから、人が多い山じゃない時なんて尚のこと、気をつけています。
無事に一般道に下りた時には、自然と頭が下がりますよね。
「今日も無事に帰らせてくださり、ありがとうございます」って。

それにしても、強盗犯の刑期があけるんですか…きちんと更生されているならいいのですが、そうでなかった時の事を考えると、怖いです。
どうか何事もありませんように!

Re: No title

悠さん、再びこんばんは♪

そうなんです、大々的に宣伝されるような本じゃないので気が付きにくいんですが、金さんがいつの間にか新しい本を上梓されていたんです。私もたまたまAmazonのサイトを開いたときにお勧めで出てきたので気が付いたんですが、本屋さんでも平積みになっているわけじゃないみたいなので気が付きにくいかもしれません。私の場合、「山岳救助隊日誌」はAmazonで経由で古本を買いましたし、他にも何冊か山関係の本を買っているので候補に出てきたようです。普段はうざい広告ですけど、こういう時は便利ですね(笑)。

奥多摩は、特に日原川流域は険しいところが多いですよね。稲村岩や籠岩、燕岩みたいな奇岩もあっちこっちにありますし、崩壊が激しくて登山道だったところが次々と廃道になっています。死亡事故の相次いだ大ダワ林道はもう完全に放棄されたようですし、震災以来閉鎖中の小川谷林道も2015年再開と言う話を聞いていたんですが、今のところその気配はまったくなさそうです。唐松谷林道も滑落事故が相次いでいましたが、ついに先日、通行止めになりました。こちらも元々実線ルートでありながら結構な難所だったようですけど、大ダワ林道と同様の運命をたどりそうな気がします。八丁橋方面から雲取山方面への登山ルート、今現在では悠さんが歩いた富田新道しか残っていません。金さんの今回の本によると、大ダワ林道の東側の尾根筋(二軒小屋尾根)を芋ノ木ドッケへ向かうルートが新しい登山道として候補に挙がっているみたいです。今現在でも通れなくはないので私も狙っているんですが、東日原からのアプローチがやたら長いのと、大ダワ林道に人が入り込まないように手前の沢の橋が撤去されてしまっているので、靴脱ぎ渡渉が必須らしくて二の足を踏んでいます(笑)。
プロフィール

徒骨亭主人

Author:徒骨亭主人
「むだぼねていしゅじん」です。「とこつ」ではありません。
主な関心事は電子工作、鉄道模型、空モノラジコン。その他、オーディオ、銀塩カメラ、クラシック音楽、映画などなど・・・何のことはない。どれも皆、昔ながらのオヤジ趣味ですな。最近は13年11月から始めた山歩きに熱中しております。
女房に頭の上がらない、小学生の息子を持つ父親です。

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